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「舞踏–大いなる魂」北京通信(1: 2011年2月25日)

昨年11月のロシアツアーに続いて、北京での「舞踏–大いなる魂」(国際交流基金主催)が始まる。

北京でもロシアと同様、舞踏公演を軸に、舞踏ワークショップ、上映会とレクチャー、それに展示が行われる。舞踏公演は、ロシアでの山本萌・白榊ケイさんに代わって、和栗由紀夫さんを中心としたチームで行われる。

メンバーは、和栗さんのほかに、川本裕子さん、マレーシアから Yeow Lai Chee さんが参加し、さらにワークショップ受講生から数人が選抜されて出演することになっている。

なにしろ、北京は初めてで、不安と期待が交錯している。これまで、北京で公演した舞踏家は片手に満たない。もちろん、土方巽の舞踏を紹介するのは初めてである。

土方巽アーカイヴにも、これまで中国本土からの来訪者はひとりもいない。はたして、北京の人たちは、舞踏について、土方巽について、どれほどの情報をもっているのか、はたして関心を寄せてくれるのか。

これまで、北京で活動したダンサーからいくらかの情報を得ているが、実体はどうなのか。実際に目で見て、耳で聞いて、とにかく体験しないとわからない。

羽田から北京行きの日航機に搭乗。ロシアにつづいて、国際交流基金の北川陽子さんが同行、というか、すべてオーガナイズしてくれている。

いよいよ中国といいながら、とりたてて緊張感はない。しかも、わずか3時間半で北京首都空港に着く、いや着いてしまう。

私の頭の中には、特別に中国について学んでいるのでもないが、まざまな、しかもある意味では膨大な中国についての知識があり、知識に基づいた体験があるはずだ。私が今も書いている漢字に始まり、学校の授業で教えられた中国、新聞や雑誌で知った中国、テレビ番組や映画でイメージした中国、いろんな人に教えられた中国、それらが私の頭の中で渦巻いている。

その中国に降り立つことになった。中国について数十年にわたり情報を与えられてきたのが、わずか3時間半で着いてしまって、実際の体験の第一歩を踏み出す。こんなに、簡単に来てしまっていいのだろうかと自問する。長年生きてきた感傷にすぎないのかもしれない。

何しろ出発前はあわただしい時間を過ごし、自分の体の中に中国を沈潜させる余裕は全くなかった。また、旅のために必要な情報を仕込む時間もなかった。

ギリギリになって旅の準準備をして、あわただしく飛び出す。大事なミッションである。旅行バッグは展示物と資料でふくれあがっている。ゴロゴロとひっぱるだけで、疲れるほどだ。

私が早朝に起きて羽田まで3時間を要し、羽田の国際線はすいているので、出国審査はものの15分で済み、そして3時間半で北京である。

北京の首都国際空港はさすがに大きく閑散とした感じである。入国審査は実にスムースである。4,5年前に、イタリアから上海空港乗り継ぎで帰国した際の、空港での扱いよりもスマートになっている。

今回は、私があまりに重そうにスーツケースを扱っているのを見て、中を見せろと言われたが、少し見せて「これは日本のダンスの写真で、中国の人に見せるために持ってきた」というと、すぐOKがでた。販売目的で絵画を運んできていると見たらしい。

さすがに、入国ゲートを出てくると人があふれていた。国際交流基金北京事務所の佐藤訓子さんが迎えに来てくれていた。これからずっと佐藤さんにお世話になる。ロシアですっかりお世話になった別府さんの同期ということで、安心して任せられる気がする。

すぐに、車で市内に向かう。30分ばかりで都心に入れるとのことで、たしかに高速道路?はすいていて、一気に北京の中心部に来た感じだ。まず、ホテルに入る。ソフィテルワンダ北京という洒落た名前だが、ちゃんと正式には中国名がある。

次々と現れる高層ビルを車内から眺めてきたが、ホテルも高層である。ロビーに入ると驚くばかりの豪華さである。といって、成金が金にあかして派手にしているのでもなく、シックな感じを演出している。高い天井に大理石の柱、木工芸的な巨大なパネル、レセプションデスクの中国的な装飾。モダンなデザインのなかに、ところどころに伝統的な要素が仕込んであるといった感じで、何よりさわやかな植物をインテリアに使っていて気持ちがいい。

これも中国の経済発展の成果であろうか。それを間近に見て、ショックというのでもないが、中国体験の始まりであろうと思わされた。

通された部屋も素晴らしいのだが、それはおいおい。

休む間もなく、本当にスーツケースから衣類をかき出すだけで、また同じ荷物を手にして、ロビーに降りる。そうそう、エレベーターを降りる場合はいいのだが、昇る際にはルームキー(カード)を所定の差し込み口にインサートして反応させないと、エレベーターは動いてくれないのである。

ただちに、国際交流基金の北京事務所に向かう。ホテルは北京の大動脈である長安通りに面していて、その長安通りを東に向かう。歩いても行ける距離という。ということで、車ではすぐ。

近辺はオフィス街で、事務所はその一角のビルの1フロアに入っている。モスクワでもそうだったが、事務所といっても、オフィスだけではなく、図書室が併設されている。それに、明日の上映とレクチャーの会場となるスペースがある。

所長の杉田松太郎さんのあいさつとレクチャーを受けて、早速、明日の準備にかかる。プログラムオフィサーとして現地雇用の張さん(Zhang Xu)さんが加わってくれる。ここでは、佐藤さんよりも勤務が長いという。

中国人の名前を読むのはむずかしい。張さんも名前の漢字は初めて見る字で読めないし発音できない。また、「チョー」さんと呼んではいるが、日本読みをしているだけで、中国音では言うことができない。つまり、名刺には漢字(しかも簡体字)とアルファベットが併記されているが、いずれを目にしても発音できない。これは辛いところである。

勘弁していただいて「チョー」さんである。

まず、展示の準備にかかる。椅子席で100人ばかりが入れるスペースで、壁面には展示用のレールがセッティングされている。ここで上映もレクチャーも行うので、そのつもりで展示を行うことになっている。背後の白い壁面に、細江英公さんの「鎌鼬」の写真(額装)を架けることにする。

まず、日本から運んだマットに収めた写真を額装する。それを展示する、これだけで、なかなか印象的な展示である。といって、写真展ではないので物足りない。さらに、その少し手前にラウンド状に椅子を並べ、その1脚1脚にマットに収めた中谷忠雄さんの写真を配置していく。これで、少し奥行きがでた。中谷さんの写真は、舞台の記録写真もあるが、多くはアスベスト館での土方巽や大野一雄の写真である。

さらに手前に、土方巽をプリントした布のバナーを垂らすことにする。これで、ずっと奥行きがでて、平面的な写真展ではなくインスタレーションらしくなる。

加えて、明日の当日には、演壇の傍にも布のバナー(土方と阿部定)を架けて雰囲気を出すことにする。

私は昨夜の睡眠時間がほとんどなかったので疲れていて、これで十分という気持である。それに、2日目のレクチャーと上映は、また別の会場なので、この展示も1日限りである。

北京初日、体は疲れはしているが、心は逸っている。この夜は、辛い貴州料理を食した。

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