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慶應義塾大学アート・センターのお知らせや、活動のレポートをお届けします


台湾での舞踏イベント参加の報告

表演藝術      ACT       The Tao of the Body BUTOH Fu

左:舞台芸術のアーカイヴ設置のためのシンポジウムのプログラム
中:「藝術観點」秋季号No.56。特別企画として土方巽の特集
右:土方巽と舞踏をめぐるシンポジウムのプログラムと発表原稿集。付録に土方資料集


今回の台湾での活動の報告は長くなるが、許していただく。

9月と10月、招かれて台湾に出かけてきた。
台湾では近年、舞踏に強い関心が寄せられていて、ことに土方巽の舞踏が注目されている。
まず、「2013亜洲展演交流」として、「身軆之道 舞踏志異」The Tao of the Body BUTOH FUが高雄と台北で開催された。
台湾の梵体劇場と和栗由紀夫の好善社が組んでの舞踏公演《我心追憶:聊斎志異之世界》が、選出された台湾のダンサー10人により、和栗由紀夫の演出・振付で行われた。高雄では衛武營芸術文化中心を会場に、台北では交番劇場(通称)を会場にして実施された。
あわせて、「《肉軆的叛亂》土方巽」と題した展示も行われ、台湾の舞踏ファンのみならず、舞台芸術の関係者に喜んでいただいた。
台北の劇場は、日本の統治時代に建設された元交番の3階建ての建物である。劇場とスタジオ、展示場に改造しての施設で、当時の留置場もそのまま生々しく残されていた。
公演には多くの観客が見にきてくれて、6回の公演が満員であった。
活動の後半は、3つのシンポジウムに参加した。
まず、国立台北藝術大学博物館が主催する「表演藝術の記録と資料庫設置講座」に私と本間友が招かれた。同大学ではパフォーマンスのアーカイヴを設置しようという動きがあり、土方巽アーカイヴを紹介してほしいということであった。朝早くから夕方までぎっしり詰まった日程で行われた。
続いて、同大学に招かれ授業の一環として、公開のシンポジウムが開かれ、土方巽の舞踏をテーマに私と和栗由紀夫さんが講演を行った。大学のすぐれた施設を使っての催しで、参加者も熱心で質問も多く出た。
そして、最後に国立清華大学の施設で「從肉軆的叛亂到形塑—2013台日身軆美學論壇」と題するフォーラムが開催された。私と小菅隼人が土方巽の舞踏について発表した。それに和栗由紀夫さんが実践的に土方舞踏を紹介した。もちろん、台湾の研究者も舞踏について歴史的、あるいは思想的に検証を加える発表を行った。
台湾にはすでに、舞踏についての研究が「行われていて、これからの若い研究も育ちつつあったことが印象的であった。

 以下、私の台湾での活動を紹介した新聞連載(秋田魁新報)の原稿をはしょって引用しておく。台湾の雰囲気を感じてもらえればと思う。
1.(展示)
 台湾の舞踏のカンパニーが企画して、「身軆之道 舞踏志異」と題しての催しが行われている。和栗由紀夫さんが現地のダンサーを使っての舞踏公演があり、併行して展示を行った。会場は俗称「交番劇場」。展覧会名は「《肉軆的叛亂》土方巽文件回顧展」。
 そもそも展示場についての情報も、元交番の建物ということと1枚の内部写真だけで、私は展示プランを描かず台湾に入った。現場の会場を見て作り上げることにした。
 台湾側は、ダンスカンパニーのディレクターもそうだが、舞台芸術の研究者も関わっているので、土方巽の舞踏史を紹介したいという要望もある。舞踏譜への関心も高く、実践と研究の両面で活用しいたいというのが、今回の一連の催しの趣旨でもある。
 土方巽の舞踏史の簡略な紹介文や「舞踏の系譜」図が大きなパネルに印刷されて運び込まれていた。これには驚かされた。
 ディレクターは、先に東京国立近代美術館で開催された「フランシス・ベーコン展」も見ていて、私も土方巽の舞踏譜とベーコンの展覧会をからめた雑誌記事を執筆するよう求められ、すでに送ってあった。
 とはいえ、展示品が揃わないならば、舞踏史を論理的に構成しようと無理をせずに、雰囲気を生むインスタレーションにするしかない。会場はと言うと、本来のギャラリーではなく、高さもあったので、平板な展示ではなく変化に富んだ構成をすぐにイメージした。
 とはいえ、私の希望が具体化するかどうかは、台湾側次第である
 まず、日本から持参した赤瀬川原平の「易断面相図幕」は大きくて目立つので、これを生かすことから始めた。これが「バラ色ダンス」の舞台で使用された舞台美術といった情報はあえて示さない。
 台湾側が「肉軆的叛亂」という、1968年の記念碑的公演名を展覧会名にもってきたので、「肉体の叛乱」の舞台のイメージをつくることにした。
 「肉体の叛乱」と言えば真鍮板だ。若い女性デザイナーと、地下鉄とタクシーを乗り継いで、金属加工販売の小さな店舗が並ぶ街に出かけた。しかし、探し当てた大きく厚い真鍮板は高価で手が出ないので諦める。ないよりもいいかと、薄くて小さな真鍮板3枚を購入する。これらを高い位置に吊し、照明を当てて雰囲気だけでも演出することにする。
 デザイナーがノンと言わない頑張り屋なので、さらに床屋の看板と金属パイプの上のウサギをと無理を言ってみる。
 電飾看板、通称「アメン棒」。台湾にはまさかあるまいと思ったが、展示見学に来ていた国立台北芸術大学の林先生が「台湾にもかつて在った」とおっしゃる。そうならとスタッフが探してくれることになった。
「生きているウサギ?」「もちろん」「高いポールの上に載せておいても落ちないですか」「ポールの上に皿があれば大丈夫。うさぎは怖がりだから」
 準備の最後の日に電飾看板が届く。片手でも持てる小さくて軽い看板だが、青と赤を帯びた明かりは、暗い空間では効果抜群である。ウサギは無理強いしないことにした。
 ついで、「竹と寒冷紗で作る小型上映空間」を望んだ。1人で映像を見るための仮設テントのような装置である。これは私のアイデアでロシアでの展示で制作している。私以外の誰も実物を見たことがないが、興味をもってくれた。
「台湾にも竹ぐらいあるでしょう」と突っ込む。寒冷紗は知らないという。翌日、会場の床に竹の束が置いてあった。これで土方巽の映像を常時、見てもらえることになった。
 来週はまた台北。公演と展示に続いて、アーカイヴと土方舞踏についてのシンポジウムや上映会が行われる。これで、台湾に土方巽が一気に紹介されることになる。
2.(シンポジウム)
 9月に続いて台湾に出かけてきた。土方巽展の撤収と、その後の舞踏をめぐるシンポジウムなどに参加するためである。
 土方巽を生んだ秋田の人でさえ想像もつかないほど、台湾では舞踏と土方巽を迎えてくれる人たちがたくさんいる。今回の一連の催しのうち、舞踏公演にも多くの観客が来てくれたし、公演に出演した若いダンサーたちも、展示を見て土方巽に共感し、ワークショップやシンポジウムにも参加して、たっぷりと土方巽の舞踏を知ることとなった。
 すでに舞踏や土方巽で論文を書いている、何人もの上演芸術の研究者や学生とも出会った。彼らは、舞踏と土方巽の資料に、言葉は悪いが飢えているのである。土方巽について書かれた文章やチラシ、もちろん動画などを真剣に求めている。
 まず、国立台北芸術大学の博物館研究所が主催する「表演藝術」のアーカイヴをめぐるシンポジウムで、土方巽アーカイヴについて本間友とともに発表した。
 ついで同大学での講義の一環となる講演会で土方巽の舞踏について話し、さらに「2013台日身軆美學論壇」(フォーラム)での舞踏と土方巽をテーマとしたシンポジウムで土方巽の舞踏譜をめぐって、小菅隼人とともに発表した。
 このフォーラムに合わせて、美術誌「藝術観點」でも土方巽の特集が組まれ、私もベーコン展から起こし、土方巽の舞踏のメソッドについて寄稿した。
 最後のフォーラム終了後、参加者がそれぞれ、展示に使った土方巽の写真パネルを掲げての記念撮影を行ったが、撮影が終わると、若い参加者たちは「土方先生ありがとう」と大きな声で唱和した。
 さすがに私も驚いたが、それ以上に感激した。彼ら彼女らはそれほど、土方巽とその舞踏を学ぶことを喜びとしているのである。

             *
 
2回の台湾行きで若い友人がたくさんできた。一人ひとりの顔を思い出しても、だれもが快活で素直で意欲的だった。台湾との交流は今後も継続したいし、ますます高まるだろう。
 土方巽の舞踏がそのまま台湾で演じられることを求めているのではない。台湾は台湾で新たな創造が行われる必要がある。土方巽の舞踏の思想とメソッドが、どう台湾のダンスに有効か、われわれも協力を惜しまない。

(文:森下)


展示準備     シンポジウム記念写真
台北の交番劇場での土方巽展の展示準備     土方巽の写真パネルを掲げてフォーラム終了後の記念撮影。
                       この後、「土方先生ありがとう」の声が響いた。


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