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慶應義塾大学アート・センターのお知らせや、活動のレポートをお届けします


【催事報告】アムバルワリア祭 VIII「西脇順三郎 影響と受容」

【概要】
アムバルワリア祭 VIII「西脇順三郎 影響と受容」
2019年1月19日(土)14:00~17:00
三田キャンパス・北館ホール
主催:慶應義塾大学アート・センター 
共催:慶應義塾大学藝文学会

【登壇者】
司会:新倉 俊一(明治学院大学名誉教授)

「センチメンタルな金時計——西脇順三郎とジャン・コクトー」
笠井 裕之(所員/法学部教授)

「T.S. Eliot Heard by Nishiwaki Junzaburo: He Do the Different Voices」
ローザ・ファン・ヘンスバーゲン(ケンブリッジ大学)

「古都台南の詩人たち 台湾における西脇詩受容の側面」
大東 和重(関西学院大学教授)

【報告】
西脇順三郎アーカイヴ(2012年開設)では、西脇研究の第一人者である新倉俊一氏を中心に、詩人や研究者の皆さんとともに毎月一回、研究会を開催している。また毎年、西脇順三郎の誕生日の一月に、記念のシンポジウム「アムバルワリア祭」を行ってきた。毎回、テーマを設定して、ゲスト講師の方々にさまざまな話題や貴重な知見をいただいている。
第8回目となる本年度の「アムバルワリア祭」は、西脇詩の世界をより奥深く探求する試みとして、これまで議論に上がってこなかった視点が設定された。それは、西脇順三郎の「国際性」である。1922年英国へ留学の途についた西脇は、ロンドン滞在を経てオックスフォード大学に在籍し、当地では古典と中世英文学に親しんだ。モダニズムの詩、散文、絵画など、ヨーロッパで学び、見聞した芸術は西脇の詩の世界へどのように染み渡っていったのであろうか。一方、西脇の詩や詩論は国外にも影響を与えていた。2017年夏に日本で公開された映画「日曜日の散歩者 わすれられた台湾詩人たち」(監督:黃亞歷 ホアン・ヤーリー)で示されていたように、実は日本統治下の台湾で、西脇は若者たちに大きな衝撃を与えていたのだった。
ご登壇いただいたのは、仏文学分野でジャン・コクトー研究をされている笠井裕之氏、英国ケンブリッジ大学で詩、言語、パフォーマンス等の研究に携わるローザ・ファン・ヘンスバーゲン氏、台南文学の専門家であり、上述した映画の監修をされた大東和重氏の3名であった。
新倉氏のイントロダクションで幕を開けたシンポジウムは、まず笠井氏が、これまでほとんど誰も語ってこなかった西脇から見たコクトー、西脇が受容したコクトーを、丹念に西脇のテクストをたどりつつ示された。「コクトーはランボー以来最大な詩人だと思うが」や「コクトーは『芸術は肉体化された科学である』といっている。」など、これまで見過ごされてきたコクトーへの言及は多彩かつ多岐にわたるもので、聴衆の方々も興味深い様子であった。
ファン・ヘンスバーゲン氏は来日がかなわなかったため、ビデオ収録にて講演していただいた。非常に聞き取りやすい日本語で話され、また英語資料をプレゼンテーションしつつ朗読してくださり、会場に響く美しい発音での英詩鑑賞は、貴重な機会となった。西脇も訳しているT.S.エリオットについて、文学的に特徴のある表現が、実は社会的な階級や地理的差異を含むものであること、その点がまさに西脇の詩にも表れているのかもしれないとの示唆はたいへん新鮮な視点を与えてくださった。
大東和重氏は、まず現在の台湾のおおまかな情報、そして簡略な歴史的経緯と民族や言語についてお話しくださった。一般の方にも非常に理解しやすい形で写真を豊富に示してくださり、リアルな台湾を感じることができた。そして台南でモダニズム詩人たちを結集して「風車詩社」を結成した詩人や、慶應で教鞭を取っていた西脇の元に留学するほど、熱意を持った若い台南詩人たちのことを紹介してくださった。中でも楊熾昌は西脇の詩論から大きな刺激と影響を受けたといい、これまで西脇が国外に影響を及ぼしたという指摘がほとんどないなかで、非常に重要な知見をいただけた。
最後に新倉氏の司会により、全員でのディスカッションが行われ、終盤にはフロアからの鋭いご質問もいただき議論が活発に行われた。(記=森山)

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