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【展覧会報告】 スタンディング・ポイントII「アナ・メンディエタ」

スタンディング・ポイントII「アナ・メンディエタ」

日時:2019年3月25日(月)~5月24日(金)

場所:慶應義塾大学アート・スペース

 

アート・センターでは、若い世代が学ぶ大学という場でこそ同時代を生きるアーティストたちの作品と出会う機会を作りたいと考え、2011年度から5年にわたり「同時代の眼」シリーズを開催してきたが、それに引き続く新たな現代美術の展示シリーズとして「スタンディング・ポイント」シリーズを本年度より開始した。このシリーズは、自立した立脚点をもつ現代作家を紹介し、アートの現代社会における可能性を考えていこうとするものである。

寺内曜子展で開始したこのシリーズの第2弾としてキューバ出身のアーティスト、アナ・メンディエタ(1948-85)の展覧会を開催した。12歳で故郷キューバを離れざるを得なかったメンディエタは、その地への思いを背景に自然に深く身を浸し、大地を、地球を呼吸するように制作した作家である。メンディエタは自らの身体を用いたパフォーマンス的な作品から出発し、フィルム作品や写真作品にそれを展開した。特に、彼女自身が身を直接大地に横たえ、あるいはその人型を作品のモチーフとした「シルエッタ・シリーズ」は彼女の代表的な仕事と考えられている。今回は、この「シルエッタ・シリーズ」から作品を展示した。

展示は9点の写真作品で構成された。6点がアイオワで、3点がメキシコで制作されたものである。アイオワは、キューバから12歳でアメリカに亡命した際に居住地となり、後にニューヨークに移るまで、大学までの時期とアーティストとしての初期段階を過ごした地である。一方、メキシコは1980年代になってキューバを再訪することが可能になるまで、彼女にとってある意味でキューバの代替地的な役割を果たした土地であった。彼女は「自分の場所」と呼ぶことができる自分とつながりがあると感じることができる場所で作品制作を行っているのである。

今回展示した作品はメンディエタの典型的な作品群であり、そこには自らの身体を媒介として展開する彼女の作品の多様性もまた見出すことができる。彼女自身が土をまとって樹と同化するイメージや、ささやかに枝の花を用いて人型を示唆する作品、水辺の窪地と藻が人の姿を出現させるもの、自分の人型を大地にスタンプした写真、古い教会の壁龕に小枝で人型を作り上げた例、などバラエティに富んだ作品群となった。そして、どの写真にも、メンディエタの強烈な存在感を感じることができる。また、1970年代の作品でありながら、1970年代の時代性よりも、今日的な問題提起を強く感じる作品であると言ってよい。この点は、来館した学生の反応や感想からも実感できる点であった。

メンディエタは、残された資料の研究が進み、2000年代に入ってから重要な研究書の出版や、回顧展が相次ぎ、再評価が進んでいる。しかしながら国内では展覧会出品は散見されるものの、まとまって作品を見る機会は殆どなく、小規模ながらも個展として貴重な機会を提供することができたと言ってよいだろう。また、授業の一環として展覧会を訪れてもらう例が学内、学外ともにあり、大学での展示として有効に活用されたと言ってよい。

(記=渡部 葉子)

 


会場写真撮影:村松桂(カロワークス)



 

 

 

 

 

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