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【展覧会報告】アート・アーカイヴ資料展XIX × プリーツ・マシーン3:中嶋興―MY LIFE

アート・アーカイヴ資料展XIX × プリーツ・マシーン3:中嶋興―MY LIFE

場所|慶應義塾大学アート・スペース
会期|2019年9月9日(月)-11月1日(金)土日・祝日休
時間|11:00-18:00
主催|慶應義塾大学アート・センター
協力|CCJ

アニメのひとコマを人生の一日だとすれば、一生はいったい何コマになってしまうのでしょうか?[…]一生を通していかに綜合的に自分の映像をつくりあげて行くか……が、私のアニメ的思考なのです。私は一作一本コマ切り短編主義者ではありません。コマ切り短編作品をめざす作家もいれば、私のように生物学的サイクルでアニメをとらえている人間もいるわけです。[…]いかに私のように長編の中にどっかと腰をおろし、一生一作をつらぬきながら、予告編もどきの短編をいかにも完成品のようにちらつかせるのがいとむずかしきところでございます。

―中嶋興[慶應義塾大学アート・センター・アーカイヴ・中嶋興コレクションが所管するクリッピングより。掲載誌、日付は未詳だが、おそらく雑誌掲載の文章であると思われる。]

 中嶋興の活動は多様である。アニメーション、写真、ヴィデオ・アート、彫刻、インスタレーション、グループ(「ビデオアース」)、企業CM、執筆、アニメーションの歴史研究、地域再生(「アニメ神社」という突き抜けた発想によって)、教育…。仮に、その多様さを内在的に捉え得るパースペクティヴがあるとするならば、それは中嶋の人生(Life)そのものだと言えるだろう。

 中嶋は家族を対象とした作品《MY LIFE》(1971年制作開始、1977年初公開)を制作している。およそ50年経った今もなお制作中の作品である。それは数十年にわたる出来事の記録をおよそ数十分へと編集し、縮約してみせる。「一生一作」である限り、全ての制作活動は同時にひとつの作品へと向けられた資料(素材)だということもできる。中嶋はアーティストであるとともに、未完の「MY LIFE」へと折り畳まれる膨大な資料群を制作するひとりのアーキヴィストでもあるのだ。中嶋の制作の諸断片と出来事を折り畳む方法を通じてアーカイヴを作るという営みについて思考した。

● 関連イベント

上映会において中嶋興の映像作品を、公開制作において彼の制作の方法論を、トークにおいて彼の思想的背景をそれぞれ探究した。特に、最終日に行った「最新《MY LIFE》上映会+トーク・セッション MY LIFE MY LIFE」では会期中に編集された《MY LIFE》の最新編が上映され、それについてのディスカッションが行われた。《MY LIFE》2014年版までは右画面に誕生から始まる生を、左画面に葬儀によって告げられる死を配置していたが、2019年版では黒い全画面を背景とし、中嶋の詩がスクロールし、ゆっくりと波打ち際が現れるカットから開始された。2014年版までは禁欲的に画面の中に登場しなかった中嶋が2019年版では登場し、写真を繰りながら、先祖をめぐる自身の歴史について語っているカットが挿入されている。ディスカッションにおいて語られた「私達は《MY LIFE》の右画面と左画面の間を生きている」という発言は、その構造を明快に示すだけでなく、私達の生の有様を述べた発言でもある。今後も《MY LIFE》の制作は継続されるが、それはまさに、アーティストであるとともにアーキヴィストでもある中嶋の編集に終わりがないという理念を表現することになるだろう。

(記=久保仁志)


会場写真撮影:村松桂(カロワークス)

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